Chapter2:『努力』のムコウガワ?


クリックで大きな画像を表示します

(◆クリックで画像を表示します)

 苦しい訓練は続く。
 格闘訓練時の骨折。マラソン時の脱水症状。銃の取り扱いを誤って怪我。精神的な疲労。身体的な疲労。
 何かしらの理由から、辞めていく人もいるけれども。わたしはやめなかった。おかげで心身共に強くなれた。そんな気がする――。

 熱砂の中にも水はある。

 砂漠に点在するオアシスが新兵達を心身共に癒す。
逆説的に言えば、苛酷な環境でも生き抜くための技量と体力を身に付けさせる為の訓練は、オアシスからオアシスへと渡る訓練でもありえた。

 「今日はあそこのオアシスで野営する。みんな準備しろ」
 疲労の果てに随伴教官が指示を出す。
 まさしく命の水で喉を潤す暇も無く準備に入る。
 何故ならば日が落ちた砂漠は日中のベクトルを反転させたかのような極寒の地であるから。地面からの冷えを疎かにすれば命の危険もありえる。

 ――月下、焚き火に照り返る仲間達の顔を見てやっと安堵の時を得る。
 そこにいるのは同じ時を過ごした仲間。自らの姿が映るその目には同じ安堵の時があるのだから。
 それでも弱いところはある。それは夜、静寂の闇の中から生まれるのだ。

 猫妖精は夜目が効く。目が効く分、あの闇の中での戦火の日々を思い出す。
 黒中から銃声と爆音が聞こえる記憶は心に刻まれて。
 夜は安寧をもたらすのか。それとも闇は恐怖を回帰させるのか。この動乱の時代に黎明は来るのか。
 今はただ、目をつぶり耳を塞ぎ全てを忘れて、目蓋の向こうから睡魔を呼び――

次のページへ
次のページへ