ショートストーリー
トイボックスシティの一番長い日。
(◆施設外観(夜間・海側上空から))
■0:01。『South』エリア4F、本社事務局企画部内 /*/
■5:02。トイボックス外部、駅ビルと商業施設をつなぐ連絡橋 ――聞こえるか、あの騒々しい夜明けを呼ぶ足音が。 「列の隙間は開けてください! 貴方が倒れた時の道になります!」 「写真を撮るのはトラブルの元になるので、心のフォルダ更新だけにして下さい!」
\国内から来ますた/ \鍋の国から来ますた/ \世界忍者から来ますた/ \帝國から来ますた/
\紅葉から来ますた/ \FEGから来ますた/ \フィーブルから来ますた/ \国内から来ますた/ \国内から来ますた/ \紅葉から来ますた/ \FEGから来ますた/ \無名騎士から来ますた/ \FEGから来ますた/ \避けから来ますた/ \帝國から来ますた/ \鍋の国から来ますた/ \玄霧から来ますた/ \リワマヒから来ますた/ \国内から来ますた/ \ながみ村から来ますた/ \避け藩国から来ますた/ \国内から来ますた/ \ゴロネコから来ますた/ \ロイ像持って来ますた/ 駅ビルから続く連絡橋は大行列に占拠されていた。 前夜の内から待機して、なるべく早く入場しようとする、いわゆる『徹夜組』の集団である。 「暑さ対策、水分補給はしっかりして下さい! 購買欲だけでは立っていられません!」 「時間が経つにつれ、電話はつながらなくなります! 携帯と友達は当てになりません!」 ご丁寧に椅子や寝袋、テントまで持ち込んでいる用意の良い連中はいざ知らず、徹夜組相手にアイスや弁当を売り歩いている、商魂たくましい行商人たちまで押し寄せている状況である。 ここは前もって簡易トイレまで増設しておいた企画部を褒めるべきか、それとも、揃いも揃って才能の無駄使いをしている連中にツッコむべきか。 「貴方の骨は拾いますが、貴方が散らかしたゴミは誰も拾いません! 置いてけぼりは可哀相だから止めてください!」 藩国警察本庁警備部・混雑対応特務中隊、通称『ライトセイバーズ』副隊長、ウシオ・シャーテンティーゲル警部補。 普段の警棒(本職は巡査)を、アズキちゃん応援用『ケミカルライトスティック』(誘導警備灯)に持ち替えての参戦であった。 /*/
■10:03。『Wuest』エリア1F、大型量販店『オメガシステム』正面ゲート ――エげつない。ロくでもない。イかがわしい(褒め言葉) お風呂にも入って、こざっぱりしたパンツスーツに着替えた。昨夜とは違って魅力的なビジネスレディの出来上がり。 家に帰る暇は無かったが、こういう所は無駄にそつが無い部長が、着替えの手配と施設内のサウナに交渉してスタッフの身支度を整える差配をしてくれたのだった。 ――そして今、まさにグランドオープンの時。 要人が参列するテープカットに万雷の拍手の中、感無量の気持ちに胸があふれる。 若い男女、子供連れの夫婦、年配の方々、諸外国の方、まさしく老若男女が商業施設の中に吸い込まれて行く。 つい、7・8分前まで、スピーカーから音が出ない、店舗の蛇口から水が出ない、迷子ならぬ迷い摂政のお世話、などなどなど。トラブルのハードルを乗り越え続けて来た甲斐はこの瞬間に果たされたと思う。 ――思えば、自国の人々と諸外国を結び付けるこの仕事の為に、さまざまな苦労があった。 電話帳のような経理書の山と連日格闘したり、 気に入られた巨大怪獣の頭に載せてもらったり、 樹海で迷子というか遭難しそうになったり、 お偉いさんの執務室で御用聞きに胃が痛くなったり、 暴走する3mのスーナーニワトリに追い掛けられたり、 牛乳工場長の拘りを一昼夜間かされたり、 環状線の特急に乗り間違えて帝國国境沿いまで運ばれる羽目になったり……。 ……政府の支援があったとはいえ、一般商社マンの仕事のレベルじゃないぞ……。思わず天を仰ぐと横から部長の小声が掛かる。 「そんなに胸を張っても今更大きくならないぞ」 「胸なんて飾りです。偉い人にはそれがわからんのですよ」 とりあえず部長の足をヒールで踏む。うしチチ摂政と比べるなボケ。 「我々の業界ではご褒美です」「うるさい黙れ」 /*/
■15:04。『Foret』エリア地上、海洋公園『海岸広場』 ――これよりブリーフィングを開始する。 Attention(総員、傾注)! 羅幻王国が建設していた特設ライブ会場『トイボックス・シティ』がオープンした。本日のライブはここで行われる。 その収容人数は4千人。内部には超大型空間投影ディスプレイを備え、ネットワークを介して共和国全土に、ライブ映像を転送する能力も有する。 この素晴らしき会場で最前列を警備するには、陣形を構築し、ダッシュで整列する他ない。 HQ(司令部:headquarters)であるロングアーチは、ここ海洋公園から情報支援を行う。 開場同時にライトニング小隊が南口から警備を行う。スターズ小隊は西口から側面を警備、およびアズキたんを応援せよ。 Dismissed(以上、解散)!
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# アイツの! 愛機が! タバスコ吹いたー♪ # 見たぞ喰ったぞ、この辛さ! # YAH! YAH! ふつうの、プレーヤーでも! # YAH! YAH! むさぼる、ト・ウ・ガ・ラ・シー♪ # ス・パ・イ・シー・ド、チェンジー! (トォー!) # 超辛ソードを煌めかせー(辛ッ! 辛ッ! 辛ッ!) # ゆくぞぼくらのバンバーンジー(辛ッ! 辛ッ! 辛ッ!) # 悪いヤツには、エィ! レッド純情パンチ! # 甘えん坊には、エィ! ブルーつんでれキック! # なーんーてー激しーい、超辛ー合体ッ! # 辛さ爆発! 辛さ爆発! あぁ、バーンバンージー!! /*/
――こちらライトニング03! 明らかにアズキたんじゃない熱血ソングが流れている! どういう事だ! こちらロングアーチ02、確認した。 そちらは上の階の別イベント『超辛合体バンバンジー』だ。 今から親衛隊が別ルートを確保する。 了解した、紳士たちにガンパレードな気分だと伝えてくれ! /*/
□ トウキビの風 □ # 乙女は胸に金の トウキビを 羽根のように 丘を下り # やさしく君のもとへ 明るい歌声は 恋をしてるから # 背の高い畑に 青い空 幸せなトウキビ 大きく # 乙女は羽根のように 丘を下る 君のもとへ # 背の高い畑に 青い空 幸せなトウキビ 大きく # 乙女は羽根のように 丘を下る 君のもとへ /*/
Warning! ステージからの萌えボイスを確認。各員衝撃に備えよ! Warning! HQが巻き込まれた! ライトニング通信途絶! スターズ04、ちょっと頭を冷やせ! 副隊長が鼻血を噴いて倒れた! メディック! メディーック!! 恋の超電磁砲でハートを撃れた。一足先にパライソに逝っているぞ。 俺の代わりにアズキたんを応援してくれ―― 副長! ステージが見えますか、ここがパライソです! 目を覚まして下さい副長! 副長ォォォォッッ――!!
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■20:05。『South』エリアB1、羅幻饂飩本舗『ごまるどん』店内カウンター ――体はうどんで出来ている。 ずるずるずるずる。 「インカムを付けてなければ即死だった」 ちゅるちゅるちゅるちゅる。 「アタシらが仕事に忙殺されてた時に、アイドルに夢中になってたのかアンタは」 もぐもぐもぐもぐ。 「アズキたんを応援しつつも、救護室は全日閑古鳥という俺たちの仕事振りを理解れ」 はむはむはむはむ。 「アイドル狂信者め鼻血の海で溺死しろ」 ぺちぺちぺちぺちん。 後方でヘルメットを脱いだスーツアクター4人組が激カラ坦々うどんを吹き出すのを尻目に、隣り合った2人はネコ尻尾でお互いをシバき始めた。ぺちぺちぺちぺちん。 「あらあら、仲がいいわねぇ」 「「誰が!」」 後からの指摘に思わずしっぽフェンシングを止めて振り返ると、トレンチコートを着てサングラスとショールで顔と隠した、 どうにも変装中な年齢不詳の女性が立っていた。 「申し訳ありません、お隣よろしいですか?」 「あ、すんません。どぞどぞ」 見ればカウンター席の彼女らの隣以外は満員である。女性が座った後、3人しばし、黙ってうどんをすする。すると唐突に、 「この国も人がいなくて大変ね……」 ため息交じりの独り言に、 「もう一度言って見なさいオバサン」「聞き捨てならんなオネェサン」 立ち向かうように反応した。 「……? まぁまぁ、首脳はヘボで、借金は多いは、国防力は低いは、やることなすこと地味だらけの国なのに?」 女性はひょうひょうと、楽しそうにからかうように問い掛けて、 「それがどうした。お人好しとしぶとさでは負ける気がせんな」「ウチの国の人間はね、うどんの様に“こし”があるのよ」 揃って不敵にうそぶいた。 「あらあら、頼もしいわ」 ころころと嬉しそうに微笑むと。いつの間にかゲソ天うどんを食べ終えた女性は支払いを済ませて店舗を後にした。 「――今の、ひょっとして摂政じゃねぇ?」 「……顔、良く見えなかったけれど?」 「おっぱいソムリエの俺には判る」 「巨乳原理主義者め地獄に堕ちろ」 ぺちぺちぺちぺちん。 シニョンに髪をまとめたお店のおねえさんが営業スマイルのまま引きつるのを尻目に、席を立った2人はしっぽフェンシングを再開した。ぺちぺちぺちぺちん。 /*/
■25:06。『South』エリア4F、本社事務局企画部内 ――今日も一日お疲れ様でした。 ねんがんの『養○酒とサイダーの詰め合わせ(摂政からの差し入れ)』をてにいれたぞ! のまされないようにうばいとる。 な、なにをするきさまらー。 うるさい黙れクソ兄貴ー! 会社では部長と呼べー! きみプロ! について
きみプロ! とは、アイドル候補生を<プロデュース>して、人気アイドルを生み出す育成サブイベントです。 |